2017/02/22
私が縫製を続ける理由。
<技術探求に終わりなし>
1月下旬から2月の中旬までは、我々テーラーにとっては少し時間の自由が取りやすくなる時期でもあります。毎年、この時期に日ごろ出来ない、時間のかかる作業をする事にしております。今年は久々にズボンを縫い上げました。
<採寸した数値を基準に>
テーラーとして日頃は、採寸、型紙作成、裁断を主たる仕事としております。縫製はクラフトマンと呼ばれる縫製専門の職人さんにお願いしております。STANDARD ORDERやDELUXE ORDERの場合は縫製工場にお願いする事になります。採寸したデーターを元に、お客様のご要望やお好みを加味し、最適なスタイルと着心地をご提供できるように、熟慮を重ねて製作しております。スタイルと補正の両立には技術的な裏付けが無いと、的確な指示書はかけません。自分の作った型紙を実際に縫ってみますと、型紙の理論上と実際の縫製上での違いに気づく事が毎回たくさんあります。そうすることで、今後製作する洋服にフィードバックして改良を重ねていく訳です。
<オーダースーツの品質維持と事業継続のために>
洋服を一から仕立てると、画像の様にポケットも自分の手で製作することになりますから、既製品の仕立てたポケットとの違いや特徴もよく分かります。自分の手を動かして縫製すると提携する縫製工場の技術力や特徴、仕様をきっちり把握することが容易になり、どの縫製工場にお願いして仕立ててもらうのがお客様のご要望に答えられ、当店のタグを取り付けて販売できるグレードに仕上がっているかを吟味しやすくなります。また縫製工場にも改善点や改良点を技術的側面から話し合ったり、出来上がってきた洋服への不具合に対して、型紙、縫製のどちらに欠陥があるかを的確に判断が出来るようになります。せっかくお客様にお金を払って頂いて製作するオーダースーツですから、その期待に答えるのが礼儀であり当然のスタイルでなければ長続きする事業にはならなくなります。
<オーダースーツ専門店ならではのクオリティーを>
単にお客様の体を測ってオーダーシートを記入する事なら素人でも出来るわけです。当店の場合はベースとしてフルハンドメイドの技術を活かした洋服づくりを基準にしております。オーダースーツは単に寸法を合わせるだけではないからです。スタイルと着心地のバランスの良い洋服づくりを歴代、オーダースーツ業界の先輩方はその技術の研鑽と理論の構築に一生懸命取り組んで来られました。たいていのオーダースーツ専門店にはカッターやフィッターと呼ばれる技術者がいたわけです。今でも老舗テーラーと言われる専門店には必ず技術者がおり、テーラー自身も的確な指示を出せる人が運営しているのがほとんどです。みなさん採寸、型紙作成、仮縫い着せ付け、ピン打ち、縫製までの技術的な修行を重ねてフルハンドメイドか工場縫製の洋服を製作してお店を運営なさっています。しかし、昨今のオーダースーツ専門店の中には一切の技術修行なしに運営するお店が多くなりつつあって、生地問屋さんや縫製工場さんからはあり得ない指示書やクレームが多くなって困っているのが現状とのお話を耳にする事が多くなっております。
<コストパフォーマンスに優れるオーダースーツを>
日本のオーダースーツの縫製工場の技術力の高さは世界でもお墨付きを頂ける基準にあります。それは原点にフルハンドメイドの技術が活かされており、そこに既製品の優れている点を合理的に加味しているからだと言われております。特に当店がお願いしている2社は日本でもトップレベルの会社です。実際の洋服の縫製を知っている我々から見てもコストと技術力のバランスが非常に優秀であることは間違いないと思っております。もちろんROYAL ORDERのフルハンドメイド技術は素晴らしいと思います。が、一人の職人さんが縫い上げるので、縫製着数が少なく、どうしても高コストになってしまいます。普通では購入するの躊躇してしまう価格になってしまっているのも事実です。普通の人が購入可能な価格帯で、フルハンドメイド技術のオーダースーツをきっちりと継承し、そのエッセンスを最大限に落とし込んだ当店のSTANDARD ORDERやDELUXE ORDERのオーダースーツを製作するためにも時間の許す限り縫製は続けて研究をしていこうと思っております。