スーツの前ボタンは何個留める!?
<2つともボタンを留めてしまっている画像>
よく見かけるビジネスマンのイメージ画像です。スーツの前ボタンを全部留めてしまっています。スーツの正しいボタンの止め方はテレビを見ていても間違っている人がいて、スーツを製作して販売する仕事をしているだけに気になってしまいます。当店でもスーツを試着した時に前ボタンを全て留めてしまうお客様が時々いらっしゃいます。そんな訳で、本日は正しい前ボタンの留め方のお話です。
現在よく見かけるスーツのデザインはシングルの2つボタンか3つボタンが一般的です。まず2つボタンの場合ですが、上だけを留めて下は留めないのが正しい着用です。画像の様に下も留めてしまっているのを目にする事がありますが、それは間違いです。ではどうして下を留めてしまうとダメなんでしょう?
<こちらも同様に2つ留めてしまっている例>
それはスーツの前ボタンは2つボタンのデザインの場合、上のボタンのみが重なるように設計するのが一般的で、そこを頂点に左右にカーブを描いて裾線に向かっていくデザインがほとんどです。よって、第二ボタンの位置ではすでに重ならない設計になっているわけで、そのボタンを留めるという事は、無理から左右の布地を持ってきて重ならす事になる訳です。
正面から見たときに不自然なシルエットになりやすいので、留めない方が正解です。
<3つボタンの場合>
3つボタンの場合はフロントデザインによります。上の画像の様にハーフ段返りや段返りのデザインは、第一ボタンと第二ボタンの間で襟が返っています。第一ボタンのボタンホールも裏側からかがられていて、表に出る部分が美しくなるように縫製されております。よってこのデザインの場合は真ん中のボタンを1つだけ留めるのが美しい着こなしになります。
画像の様にザ3つボタンのデザインは上のボタンを2つを留めてもOKですし、画像の様に真ん中だけ留めてもOKです。3つとも留めてしまうのは×です。
今回は前ボタンのお話でしたが、ほとんどの方は知っておられ退屈だったかも知れません。洋服の設計をする我々が図面を起こしてボタンの位置を目にすると一番下のボタンは留まらないと思うぐらい距離があります。しかし、それは洋服を仕事で扱うテーラーという職業だから、そう感じるだけかも知れません。普通はそんな設計図を見る機会も無いですから。誰からとも無く教わった洋服の着こなしですが、せめてメディアに出られる方は正しい着こなしをして頂きたいと思います。
